色彩を持たない、日本人男性のブログ

日本について、日々考える。

『 夢を売る男 』 百田尚樹著 太田出版 2013年

 百田尚樹さんの作品は、大方読まさせて頂きました。この本は、偶然借りることが出来ましたので、今朝から読み初めました。

 世の中には、自分の本を書きたいと考えている人がたくさんおられます。出版会社も本を読む人が少なくなり、苦戦をしているようです。確かに本を読むという行為を行うよりも、テレビ・映画・PC・携帯電話などの技術の発達により、こちらの方を選ばれるという人が多くなってきているようです。本が売れなくなっても、企業は利益を出さなければなりません。出版社も本が売れなくても、儲ける方法があるという内容の本です。

 実際には、詐欺のような方法ですが、「詐欺というのは、本人が騙されたと思っ時に成り立つ犯罪」とこの本でも書かれているように、詐欺にあったと思わせない方法で出版社が利益を得ているようです。

 通常、本は出版社が出版しますが、著者にお金を出させて出版するという方法です。これですと、数十万円の出版費用を数百万円とすれば、本が売れなくても本を世の中に出すだけで出版社は利益を得ることが出来ます。売れれば、ラッキー、売れなくても損をしないという仕組みです。

 丸栄社のやり手編集長の牛河原は、言葉巧みにお金を持っている人に出版を勧めます。「あなたには、才能がある」、「丸栄社で出せば、自費出版ではない。東野圭吾宮部みゆきと同じように全国の書店でも並ぶ」、「国会図書館にも納められる。自分の本が永久に残る」という言葉を使います。この牛河原は、よく人の心理を見抜いています。本を出すという魅力は、自尊心と優越感を満たすということもよく理解しています。このような人の心情を利用して、詐欺を詐欺と思わせない方法でこの出版社は儲けています。騙されている方も自分の夢を叶えてくれるということで感謝をしているくらいです。中には、それでも出版をしたいという人も完全に詐欺ということも出来ないかもしれませんが、不況になるとこういった手口が増えてきます。

 頑張れば夢はつかめるという時代は、過ぎ去ったのでしょうか。「夢を見るには金がいるんだ」、「金のかからない夢は布団の中でしかみられないんだ」という部分は、現在の教育やスポーツにも関係していると思います。東京大学に進学するにも、スポーツで一流選手になるにも、現在では本人の努力だけでは大変困難になっています。ある程度の経済力がないと駄目だと思われます。東京大学に進学するためには、学校の勉強だけではなく、塾にも通う必要があるようです。これも経済的には大きな負担です。

 経済力がないとチャンスもつかめない、何だか現在は寂しい世の中だなと思いながら企業は、儲ければ良いとないと考えさせられる一冊でした。