色彩を持たない、日本人男性のブログ

日本について、日々考える。

『 沈黙 』 遠藤周作著 新潮文庫 1981年

 今年1月21日より『 沈黙 - サイレンス - 』という映画が始まります。アメリカでは昨年12月23日から公開されているようです。遠藤周作の大変有名な小説ですのでこの作品の存在について知ってはいましたが、読んだことがありませんでしたので、映画を見る前に読みました。

 この作品は、本当に良い作品でグイグイ引き込まれていきました。キリスト教や宗教を考えることについて大変勉強になり考えさせられることもあります。17世紀、江戸時代にあった史実をもとにされています。迫害を受ける人々が、どうして神は私たちに力かしてくれないのか、どうしてこのように苦しまなければならないのか、なぜ神は沈黙しているのかということが書かれています。

 しかし、良作とはいえ恐らくこの作品を映画化してしまうと、日本という国は何と野蛮な国なのかと思われる可能性があります。江戸時代の農民は搾取されていたという一方的な見方やなぜ豊臣秀吉は海外に進出したのか、なぜキリスト教を受け入れていた日本がキリスト教を禁止したのかということは書かれていません。こういうことをある程度理解していないと偏った見方になるのではないかなと心配になります。

 この作品は、昭和41年3月に刊行されたようですが、この時代は戦後マルクス主義歴史観が浸透していた時代ですので、そのような歴史観を作者も持っていたのかもしれません。遠藤周作さんの思想については、あまりよくわかりません。

 世界史的にどのような時代であったのかということを考えないと、日本の当時の政策も理解できないでしょう。アメリカで既に公開されておりますが、誤った印象を持たれないようにと願っております。もちろん、拷問を正当化しているわけではありません。

 まだ映画が始まっておりません。公開されればこの作品がどのように描かれているのか楽しみにしたいと思います。